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3DCGムービーの演出
2000年3月 公開
3DCGムービー、特に長尺でドラマ要素の多いものの
演出には、2Dアニメーションと同種の(しかし違った
知識をベースにした)特殊な演出感覚が要求される。
それはまず大きく、3DCGがハイコストで
あることに起因する。業界の相場を見れば1分=1000万円。
しかし、30分のムービーを作るのに3億円かかるというのは、
現在の日本でコンテンツ製作を考えるときに、
とても現実的な数字とは言えない。
映画一本仕上げようと思えば、
映像の直接制作費だけで9億円である。
それで利益を出す収益構造と言われても、
無理というものだろう。
戦後の日本アニメーション業界が、手塚治虫の発案により、
リミテッドを主な手法として選んできたのと同様に、
如何にローコストで作品を仕上げるかというテーマも、
避けては通れない部分である。
3DCGの総仕事量の多寡は大きく分けて
4つの要素にかかっている。
さて、3DCGムービーの演出を試み、
- モデリングする物の数
(とりわけ人物は多くの時間と試行錯誤を必要とする)- 特殊効果
(パーティクルなどの試行錯誤を必要とするもの)- モーション
(手付けモーションやリップシンク)- レンダリング
(最終的なレンダリング時間は
カメラワークの影響を多く受ける)
絵コンテを切るものは、あらかじめこれらの
要素を把握し、具体的な製作スケジュールを頭に
描きながら、演出計画を立てていかねばならない。
そうでないと、必ず各部で問題が生じ、
予算をオーバーするのはもちろん、
納品期日までに作品を完成させることが
できなくなるからである。
まず、実現可能な範囲での舞台とキャラクター設定。
特殊効果が必要な場合は、あらかじめそのテストを
しておくこと。そして、最も重要なポイントは、
省力化のための最重要ツールである
アフターイフェクト(つまり合成ソフト)を、
如何に効果的に使っていくかという計算である。
短いビデオクリップのようなものならともかく、
長尺の作品で、てんでにカメラを振り回すのは、
演出上効果が無いばかりか、
いたずらにレンダリング時間を増す結果となり、
必ず後で後悔するはめになる陥穽である。
そもそも、CGムービーでカメラを振り回すのは、
それが作り手にとって簡単であり、オブジェクトの
造作や動きがいい加減なのをごまかせて、
都合が良いからだ。もしオブジェクトがちゃんと
作られていて、きっちりと芝居をしていれば、
カメラなんか、動かす必要が無いのである。
(宮川一夫などのように、より高い次元での
カメラワークを目指す場合は違うけどね)
動かす必要が無ければ、いちいち画面全体を
レンダリングしなくても済むわけで、
要素ごとにレンダリングして合成した方が、何倍も早い。
まあ、映すべき対象がちゃんとしてなければ、
どんなカメラワークを用いたって、
いい映像になりようがないのだから、
最初から丁寧に作り込むが良かろう。
絵コンテでレイアウトを切る段階から、
常にこういった合成段階の事を考えて仕事をすれば、
あらゆる面で省力化ができ、ポイントを絞った
注力が出来る。実際の仕事の中でも、
時間のかかるモーションブロア要素を
アフターイフェクトで置き換えるのは、
日常的に行われているテクニックだし、
光源の変化と、光が周囲に与える影響のみを
別レイヤーにして動かしてやれば、
2Dの画像を背景に置くだけでも、
十分に間が持つものである。
浮いた時間で、動きのタイミング取りを緻密に
やった方が、全体の完成度としては上がるに違いない。
別項でも書いたが、CGムービーでもっとも
大事なものは、ライティングとモーションである。
さらにもうひとつ付け加えるとすれば、
編集(カッティング)であろうか。
作ったカットは、ちゃんと繋がないうちは、
単なる素材に過ぎない。
前後の関係を吟味し、ていねいにコマ数を調整して、
一連の流れに繋いで初めて作品となるのである。
よく見かける間延びしたテンポの悪いCGムービーは、
例外なくこのカッティングで失敗している。
逆に、一カットごとで見れば問題のある素材も、
上手く繋いでやることで魅力的な映像に
生まれ変わることも多い。
無い物尽くしというのも悲しいが、
必然的に短く作らねばならない各カットの積み重ねで、
いかに効果的な演出を実現するかというのも、
また、頭をひねるところ。
実写の映画ならば、カバリッジ(押さえテイク)を
たくさん撮っておいて、
編集段階で工夫をすることが可能だが、
とにかくCG製作には余裕というものが無いから、
素材の一個一個を計画的に作り、絶対に無駄が
出ないようにしなければならない。
演出の仕方も慎重に、全体を見渡したバランスの上で、
考えていくべきだろう。
簡単ながら、3DCGムービーの演出をするにあたって、
最低限知っておくべきことを書き留めてみた次第である。
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